プロジェクト詳細
矢野口地区介護予防ラジオ体操会
100円のラジオ体操が、将来いくらの価値に?
草の根の健康づくりの効果を可視化する試み。
小学校の校庭から見える小高い山の緑が、青い空に映える稲城市矢野口地区。静かで緑豊かな環境と、坂のない平坦な地形は、年代を問わず暮らしやすい場所として、長年この土地に住み続ける人が数多くいる町です。
そんな矢野口の自慢が、高齢者が自分たちの健康を自分たちで守るための「自主グループ」の活発さです。介護に頼らない生活をしていこうと、市の呼びかけに応じて、2006年頃から転倒骨折予防教室やストレッチ教室などの自主グループが次々と7団体結成されました。2011年には各グループをつなげる連絡会が結成。地域のみんなで踊りを通じて体を動かすとともに、地域への愛着を深める一石二鳥をねらって、古い記録文書をたよりにしながら“矢野口音頭”の復活を実現。今では幼稚園などに矢野口音頭の指導に出向いたりもしています。
そして今年から始まったのが毎朝のラジオ体操。中心人物の一人である安西さんは、「部屋の中でやる活動には限界がある。もっと男性が入る活動にしなければ」と、ラジオ体操の目的を語ります。その狙いが奏功して、4月に始まったラジオ体操の参加登録者はすでに200名。これまで屋内の活動にはなかなか顔を出さなかった男性の参加者や、人工透析を受けている人の姿など、より多様な参加者が集まるようになってきました。さらに夏休みは地元の小学生たちも一緒に参加。ラジオ体操の輪はじわじわと広がっています。
「これだけたくさんいる高齢者が何かしらの活動に関われていないと、大変なことになりますよ」と安西さん。要介護にならず、自立していきいきと生活できる町にしたい。そんな思いを強く持ちながらこの活動に携わります。
実はこの矢野口地区、高齢者数は約2,900人ですが、このうち、要介護認定を受けている人の割合は13%。この数字は、稲城市の平均よりも低いという数字が出ています。
もちろん、その要因には様々なものが考えられますが、他地域よりも活発と言われる地域の草の根の健康づくりの活動が、何らかの貢献をしている可能性は大いにあり得ます。
ちなみに、ラジオ体操の参加費は、初回の参加登録時に支払う、ラジオの電池代に充てるための100円。
たった100円のラジオ体操があることで、高齢者の外出機会が生まれ、健康づくりに役立ち、住民間や世代間の交流にもつながり、さてその先にどんな効果が期待できるのか?
ラジオ体操に限らず、矢野口地区で取り組まれてきた長年の健康づくりの活動を棚卸し、これら自主的な取り組みが、この地域の人々の健康づくりにどのように役立っているのか。
プロボノワーカーの客観的な視点から、矢野口における健康づくりの「底力」を、数字や具体的なエピソードをつかって、目に見えるようにすることに挑戦していきます。
(本記事は2015年度の情報をもとにしており、活動内容等は現在と異なる場合があります。ご了承ください)
団体基本情報
- 団体名
- 矢野口地区介護予防ラジオ体操会
- 活動開始時期
- 2015/平成27年4月
- 代表者名
- 安西 ハツヱさん
- 所在地
- 〒206-0812 東京都稲城市矢野口1804-3 やのくち正吉苑内 地域包括支援センターやのくち
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進捗率
進捗状況
キックオフ事前ミーティングを実施しました。
キックオフミーティングを実施しました。
活動現場体験・見学を実施しました。
対象事業・商品・サービス等の現状把握を実施しました。
対象事業・商品・サービス等の評価や期待される成果の整理を実施しました。
内部ヒアリングを実施しました。
評価の枠組みと方法論の調査・検討を実施しました。
調査方針提案を実施しました。
提案に対するフィードバックと承認を実施しました。
外部ヒアリングを実施しました。
事業成果の分析・評価を実施しました。
調査報告を実施しました。
報告に対するフィードバックと承認を実施しました。
最終ワークショップを実施。プロジェクト無事終了です!
成果
住民による自主活動が、矢野口という地域で活発なのはなぜか? ラジオ体操会が地域にもたらした好影響、実績の可視化を実現!
このプロジェクトでは、大きく分けて2つの調査報告を行いました。一つは、「なぜ、矢野口ではラジオ体操会が住民自身の手で、これほど活発に活動しているのか?」について。ラジオ体操会の活動の経緯や現状の活動を分析し、活性化に至ったポイント(例えば、連絡会の設置や地域包括センターとの友好的な連携等)を提示していきました。
もう一つは、ラジオ体操会参加者へのヒアリングやアンケート調査を通して明らかになった、自主グループ活動がもたらしている効果についての報告です。地域の高齢者の健康増進と共に、ラジオ体操に参加したことがきっかけとなり、他の社会的な活動への参加につながっていることなどがわかりました。
団体のみなさんからは、「分析してもらうことで自分たちの活動意義を改めて知ることができました」、稲城市役所の担当者からは「市内のモデルケースとなる団体なので、今回示された結果を他団体支援のための参考にしたい」など、たくさんの感想をいただきました。
プロボノチームによる取り組みから約2年が経過した今年、その後の変化をお伺いしに、支援プロジェクト当時のプロボノメンバー・田中さんが、団体を訪問したところ、以下のような報告をいただきました。
1、自分たちの活動が、地域の新しいコミュニティづくりにつながっていることが確認できた。 2、地域包括支援センターと連携して、地域をつなげていく手順を確立できた。 3、地域包括支援センターに頼るばかりでなく、地域住民が自らつなげていくアプローチをとらないと、つながらないことがわかった。 4、プロボノのプロジェクト後、より大きな取り組みとして、介護予防だけではなく、多世代・地域のさまざな関係者を巻き込んだ「地域の支え合いの会」を結成した。
矢野口地区介護予防ラジオ体操会
安西 ハツヱさんより:
プロボノについては、私達が色々聞かれることに耐えられるかしら、とか不安はたくさんあったのですが、プロボノの皆さんが上手に聞いて下さいました。10年続けてくる中で、市とのやり取りや小学校利用にも色々と壁があってたくさんの障がいを乗り越えて来ているのですが、他に話すところがありませんでした。プロボノさんの事業評価を受けて「地域の中で元気を作っていることの証明」と「古くからの地縁型コミュニティと、体操などのテーマ型コミュニティが上手に相まって、地域包括支援センターの細かいサポートも受けながら新しいコミュニティができあがっています」という評価をもらいました。古いコミュニティで生まれた私が新しいコミュニティ作りに関わっているというのはなんとも不思議ですが、自分達を評価する報告をされた時は言葉も出なかったです。事業評価を受ける、すなわち、私たちの活動を事業として見て頂いたということは非常に新しい展望でした。