地域づくりの台本
こまじいのうち(文京区)
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「こまじいのうち」運営のヒント集
最初は「居場所」が何かなんて、分からなかった
Q.立ち上げはどのように行ったのですか?
A.(浦田氏)
町会関係、民生委員など地域の方に声をかけ、NPOの方、社会福祉協議会の事業のボランティアの方たちもお誘いした。当時、誰も居場所って何なのか、分かっていなかった。実行委員会もよくあんなに集まったなと思います。分からないのに。
A.(秋元氏)
何だか分からないけど、声をかけられたから実行委員会に出てきてくれたと思う。説明を聞いているうちに、おもしろそうね、となってきたんじゃないかな。
地域+テーマ型で「新しい風」が吹いた
Q.地域外の方も参加したのですね
A.(浦田氏)
町会などの地縁関係者としては、地域活動センターの所長や秋元さんがいました。虐待防止などテーマ型の活動をしている団体は、私がパイプ役になりました。
地縁関係の方だと、行事など既にたくさん地域活動をしているので、更に新しいことをスタートするのはとても難しい。一方、テーマ型の団体を入れると、このエリア以外の人たちをお客さんと認めるかどうかという議論が実行委員会の中で起こったり…。でも、その中で、「ボランティアとかNPOってエリアは関係ないですよ」という意見も出され、議論がどんどん噛み合ってきました。新しい風が吹いて、いろいろ決められたこともあったかなと思います。
最初に人を巻き込み、みんなで理解するプロセスを
Q.立ち上げのポイントとは?
A.(浦田氏)
重ねてになりますが、まずは協議の場を立ち上げようという話をします。いろんなネットワークが必要で、いろんな人が入ってアイデアを出していくことが必要です。
最初に人を巻き込んでおいて、みんなで理解するプロセスを作っていかなければ、後からはやはり巻き込めないんですよね。
理念とかミッションのようなもの、趣旨など、そういったものをきちんと話し合って決めたよねと、合意をしておくというのが大切な事です。
組織にはコーディネーターが必要
Q.組織を作ったときに必要となるものは?
A.(浦田氏)
組織体があると、合意形成が必要となるので、誰かがその真ん中で調整しなければ、なかなか上手くはいきません。そこで、協議の場と、地域福祉コーディネーターのような、調整役を担う人が必要になります。協議の場がある事で、みんなの居場所をつくっていくことができます。
知ってもらうため あえて家の中でバザー開催
Q.オープンして、最初から人が来てくれたのですか?
A.(秋元氏)
10月にオープンして、12月までは鳴かず飛ばず。「こまじいのうち」って何なのか、みんなわからない。秋元さんがなんか変なことやってると(笑)
A.(浦田氏)
「こまじいのうち」で留守番してると、みんな表を行ったり来たり。入ってくるのはハードルが高いんだなと。実行委員の中に民生委員さんがいらっしゃって、バザーをあちこちでお手伝いされてる。だからバザーがいいんじゃないと提案があって。入ってもらうために、わざと家の中でやろうと。
A.(秋元氏)
やってみたら、大勢来てくれました。そして来た人が、こんな雰囲気かと分かってくれました。
居場所は「いつでも開いている」ことが大事
Q.最初から今のように毎日オープンしていたのですか?
A.(秋元氏)
最初は毎日ではなかったです。そうしたら、「せっかく行ったのに閉まっていた」と言われる事があり、毎日開けることこしました。来ようが来まいがかまわない。そうしたら、そこからお客さんが来はじめました。
A.(浦田氏)
居場所は、いつでも開いてて誰かがいることが大事。それはやってみて後から分かりました。例えば、瓶を持って来て、ふたを開けてほしいとか。誰かがいて、行けば話せるというのが大事です。
あえて作った「すきま時間」で交流が生まれる
Q.「こまじいのうち」の立ち上げに対して心掛けてきたところは?
A.(浦田氏)
一番大きいのは「だれでもの居場所になる」というコンセプト。必要以上にテーマ型プログラムをつくると誰もこなくなります。今やっている(カフェ型の)カフェこまなど、意図的に隙間時間をつくっている。そうすることで、お散歩中の人が入ってきたり、スタッフ間の交流ができたりしています。
肩の荷を減らすことで、手伝ってもらえるように
Q.運営で心がけていることは?
A.(浦田氏)
「ゆるやかさ」です。誰かが苦しくならないような役割分担というのは気を付けていました。例えば、(玄関でプログラム参加料を箱に入れてもらう仕組みなので)今日は何人きたからお金がいくら入っているはず…などと数える管理のような業務など、何か背負ってしまうと負担になる。そういうのはやめましょうと。肩の荷を減らすことでみんなに手伝ってもらうようにしようと言いました。
誰かがリーダーシップを発揮している訳ではない
Q.高齢社会となり、「地域で支えあう」がキーワードになっています
A.(浦田氏)(みなさんも)
「こまじいのうち」に実際に行って感じた事があるかもしれませんが、「こまじいのうち」って、誰かがリーダーシップを発揮しているわけじゃない。だから横展開できるんじゃないかと思っています。
成功しているところって誰か一人がすごくて、そこに引っ張られているというところが多いじゃないですか。そうじゃないかたちが出来ているかなと思います。
まずコーディネーターが引き受け、それから役割シフト
Q.とはいえ、誰か引っ張っていく人がいると思うんです
A.(浦田氏)
居場所づくりをスタートする時、「誰が中核になるんですか」と言われるんです。でも「やりながら作っていけばいいじゃないですか?」と答えています。「こまじいのうち」も、最初はチラシづくりから色々な調整も含め、全てコーディネーターがやっていました。コーディネーターが全部まず引き受ける。それを細分化させていって、少しずつロールシフトしていく。みんながぶつからないように調整する。コーディネーターが行かなくてもできるようにだんだんと作っていく。そうすれば、一人のリーダーシップがなくてもできるのではと考えています。
「ざらざら感」がないか、常に見ている
Q.運営で気をつけていることは?
A.(浦田氏)
「ざらざら感」がないか、コーディネーターが常に見に行っています。やすりをかけないと…って。
人の気持ちに敏感である、というのはコーディネーターに重要な要素だと思います。「ちょっとこんなことがあって…」といった、現場で気になった事をそれぞれが持ち帰り、それをみんなで相談しながら「さらさら」にしていきます。
ゆるやか運営、でもコアメンバーの役割は決まっています
Q.「ゆるやか」という言葉をよく聞きました
A.(文京区社会福祉協議会・藤本氏)
コアメンバーが、月1回ミーティングを開き、細かいことを決めているのですが、このコアメンバーについては役割がはっきり決まっています。事務的管理、ボランティア関係、などです。
メンバーには、役職的な名前をあえてつけています。気持ちが上がるじゃないですが、「学生代表」とか。肩書あると、来るのが嫌じゃなくなる。
地域の人の「やってみたい」を形にしていく
Q.「こまじいのうち」に関わる楽しさとは?
A.(コアスタッフ・船崎氏)
居場所は自分の意思で参加できるし、スタッフ、ボランティアとも繋がっている実感があるから、ここは「私のやってみたいことが出来る!」と思える場所だなと思います。自分の生きがい、自己実現、そこにもつながっている。私の実体験として、「子ども食堂をやりたいのよね」って浦田さんに言ったら、何カ月か後に「学習支援してる子の食事会をやってみない?」って、後押ししてくれて。浦田さんが、いろいろな経験を持つ地域の人に声をかけてくれました。そういう人たちが参加して、「やってみたい」が広がっていったと思います。
A.(浦田氏)
「やりたいのよね」って一言いったら、「言いましたね」と(笑)。でも、そこには調整が結構必要です。子ども食堂を立ち上げたものの、すごくたくさん人が来ちゃうとか、逆に全然来ないということもある。どうするか。そこらへんを誰かが間に入ってやらないと、なかなか偶発的には…難しいですね。
掲示板や回覧板で広報
Q.広報の仕方は?
A.(文京区社会福祉協議会コーディネーター・藤本氏)
チラシ、回覧板、掲示板。一部の新聞の折り込みにこのエリアだけ入れていたり、区の会館とかに置いてもらったりも。社会福祉協議会の「サロン」になると、文京区内のサロンの一覧があってそこに載ります。