プロジェクト詳細
一般社団法人 輝水会
「危ないからやめましょう」でなく「やってみましょう!」。スポーツならではの参加と達成感。
神経難病疾患や脳卒中などの後遺症による機能障害や麻痺を持つ人に向けて、医療の補完的な役割として、水中や陸上での運動を提供し、残された身体能力を最大限に回復させる。―― 世田谷区を拠点に活動する輝水会は、ユニークなアプローチで高齢者・障害のある人の活力を高めるプログラムを提供しています。
「福祉関係者の介助職や医療者の方は、安全第一で考える習慣がついていると思います。でも、私たちの場合は、立って卓球をやってみたいという車椅子利用者を実際に立たせるという発想をします。『危ないからやめましょう』でなく、『どう工夫したらできるか、やってみましょう!』という視点なのです」という代表の手塚由美さんは、健康運動指導士の資格をもつ、体育・運動指導の専門家です。
輝水会が2016(平成28)年から世田谷区内で取り組んでいるのが「リハ・スポーツ教室」と呼ばれるプログラムです。毎週1回全10回の講座で構成されており、初回のオリエンテーションに続いて、ボッチャ、卓球、プールでの浮力を活かした水中運動という3種類の運動メニューを各3回ずつ行っていくという内容です。
「プールは危なくないですか?」としばしば聞かれる声に、「でもお風呂には入りますよね」と答える手塚さん。「プールは大事です。当事者にとっては、プールというハードルの高い所に入れたことの達成感が大きいのと、非日常を味わえるため、その後の心の変化が大きいのです。」
できないと思っていたことが「できた」という喜び。
その高齢者・障害のある人の姿を見たり、一緒に楽しむことで、支援者・介助者や家族にも、大きな気づきが訪れます。
リハ・スポーツでは、介助者として来た人もボッチャのゲームに一緒に参加してもらいます。講師と参加者との役割の垣根をなるべく低くし、講師がすべてをお膳立てしてしまうことはありません。意図的に、室内にボッチャのボールを転がしておいて、つい手を伸ばしたくなるような環境を、あえて作ったりもします。そこに集まるみんなが、自分たちで運営しているような主体性を感じながら、和気あいあいとした雰囲気づくりを心掛けているそうです。
そうした細やかな配慮が奏功し、1回目は、それぞれのスポーツのルールを覚えたり、動きを習ったりと、ぎこちない中から始まりながらも、繰り返していくうちに、次第に慣れていき、そこに集まる皆さんがルールや進め方を体得していきます。
「こうした活動で得たことは、リハ・スポーツを行うことで、高齢者・障害のある人の支援者、家族、福祉関係者の方々が気づくことの多さです。支援者や介助者が、いままで必要のないことまで支援していたと気が付いた、といった新たな発見ができるのです」
2ヵ月半で10回の講座は終了となりますが、そのときには「もう自分たちだけで大丈夫」という状態になり、以後は、自主グループを作るなどして継続していきます。
いま、輝水会では、リハ・スポーツ教室での活動を通し、健康面での生活の質がどのように変わるかを数量値的に表す調査研究を行っています。そのデータを活用して、新たに「リハ・スポーツ」を導入したい地域や行政に役立つマニュアルの作成にも取り組んでいます。
「リハ・スポーツはそれほどスペースを選びません。例えば、卓球台がなくても、会議室の机やテーブルで代替できます。取り入れていただきやすいので、世田谷区でモデル作りを行いそこからいろいろな地域に広がっていってほしいですね」と手塚さんは話します。「リハ・スポーツを人の多様性を包括する地域づくりのための、共に生きる力を育む意識教育のようにしていきたい」とも。
スポーツの特性を活かした、全員が参加できて、達成感を得られる、高齢者・障害のある人の機能向上を図る新提案。
東京ホームタウンプロジェクトでは、2017年度「プロボノ1DAYチャレンジ」におけるパンフレットの支援に続き、リハ・スポーツの理解者・共感者を広げるために、ウェブサイトの改善を図り、団体の発信力強化をプロボノで応援します。
(本記事は2018年度の情報をもとにしており、活動内容等は現在と異なる場合があります。ご了承ください)
団体基本情報
- 団体名
- 一般社団法人 輝水会
- 活動開始時期
- 2012/平成24年7月
- 代表者名
- 手塚 由美
- 所在地
- 〒158-0083 東京都世田谷区奥沢8-30-10
- ホームページ
- http://kisuikai.com/
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進捗率
進捗状況
今回、チームメンバーの多くがプロボノ初参加ということもあり、若干緊張感ある雰囲気ではありましたが、滞りなく活動における現状や課題などについて話し合いを行うことができました。関係者様へのヒアリング、中間提案に向けて、プロジェクトが動き出します!
キックオフ事前ミーティングを実施しました。本日チームメンバー、初顔合わせです。少し緊張した雰囲気の中で始まった「はじめまして」の自己紹介ですが、プロジェクトの中身に話が移ると早速様々なコメント飛び交い、輝水会さんに聞いてみたい話のポイントが整理されていきました!
キックオフミーティングに続き、団体の皆さんとプロボノチームで、ウェブサイトに関連する「課題の洗い出しワークショップ」を行い、ウェブサイトへ訪問してほしい方や提供するコンテンツ例、期待する効果の整理をしました。
活動現場体験・見学を実施しました。
個別ヒアリングを実施しました。
11月末から12月上旬にかけてヒアリングを実施しています。
マーケティング戦略提案を実施しました。課題の洗い出しワークショップで作成したコンセプトダイアグラムやヒアリングの結果報告をはじめ、WEB改善具体策、サイトマップをご提案。終始、和やかな雰囲気の中、提案内容について概ね満足頂けました。3月中旬の最終提案に向けて、あとひと踏ん張りです。
提案に対するフィードバックと承認を実施しました。
最終提案ミーティングに向けて、チームメンバーで最終打ち合わせ。提案内容の最終化を進めます。
成果提案ミーティングを実施しました。これまで策定してきた方向性を振り返りながら、最後にサイトマップやワイヤーフレーム、コピーを提案しました。輝水会の皆さんからは、「自団体を客観的に見ながら、情報の受け手の視点から発信をどうしていくか検討できるようになった」「コミュニケーションという視点でホームページを改めて捉えなおせるようになった」という嬉しいコメントをいただきました! 記念の写真は…水中リハビリの様子を思い出しながら…のポージングをしながらパチリ!輝水会さんの活動を知るにつれ”世界が広がりました!”というプロボノチームの皆さん。周りの方にも伝えていきたい!とのことでした。
制作プラン提案に対するフィードバックと承認を実施しました。
成果
「リハ・スポーツ」教室の理念を適切に伝え、人の多様性を包括する地域づくりに繋げることを目指したウェブサイトへのリニューアル方向性を、多方面のステークホルダーへのヒアリング調査・ワークショップを通じ提案。
一般社団法人輝水会は、障害のある方、家にとじ込こもりがちな高齢者の自立と社会参加を目指した「リハ・スポーツ教室」をはじめ、啓発事業や水中リハビリテーションの調査研究、提言など活発な活動を実施しています。しかし、リハ・スポーツに関連する様々な関係者に対して情報発信できていないのではないか、団体の理念や地域社会への貢献に対する意義が、ウェブサイトを通じて訴求できていないのではないかという課題意識をもっていました。
そこで、プロボノチームは、行政・NPO団体、医療・介護従事者/医師会・学会、リハスポーツ参加者・家族・団体職員等様々なステークホルダーへのヒアリングや、輝水会の団体メンバーとの課題洗い出しワークショップを行いました。ワークショップを通じて、各ステークホルダーに対して、どんなメッセージを訴求していくべきなのか、現状はどんな説明が不足しているのか、団体にたいして求められていることは何かを明らかにしていきました。そうした結果から、ウェブサイト改善の方向性をワイヤーフレームやサイトマップといった具体的な形に落とし込み、提案を行いました。
現在のウェブサイトでは、閲覧者に、スポーツの機会を提供しているという印象が先行してしまうこともあるそうですが、今後は、リハ・スポーツを通じて、参加者の心のケアと自立支援に繋がっていることがしっかり訴求できるウェブサイトへ変わっていく予定です。
輝水会代表の手塚さんから、嬉しいご報告を頂きました。
2024年3月5日、スポーツ庁の「第3回Sport in Lifeアワード」にて、見事、団体部門で優秀賞を受賞されたそうです!
https://sportinlife.go.jp/news/20240304/11236/
(表彰式の動画)
https://youtu.be/-7RtvBH8MKU?si=wRihi0mPP0BAqFmf
同アワードは、生活の中にスポーツをの実現を目指し、スポーツ人口拡大への貢献に資する取り組みを表彰するもの。
輝水会の「障害のある人の定期的なプール活動(健康作り)」が、社会生活自立支援に向けたすばらしい取り組みとして表彰されたこと、複数回のプロボノプロジェクトもその一助としてチカラとしていただいたこと、本当に嬉しく思います。
世田谷区を中心に活動しながら、今では他地域でも同様の活動をしたいというグループに育成指導を行うなど展開を広げていらっしゃるそうです!
以下、手塚さんからのコメントを紹介します。
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障害があることでスポーツ実施率は激減することに加え、プールでの活動は危ないのではないかなどの懸念も多く、安心して活動できる場がないと言われることが多くあります。
障害のある人にとってプールは入れただけでも自信につながります。
地域にある障壁を乗り越えて障害のある人、地域に暮らす方々にスポーツを通じた活動の場と機会づくりを続けて参ります。
東京ホームタウンプロジェクトでは数年に渡り多方面からのご支援をいただき、
今回の受賞にもつながりました。心より御礼申し上げます。
【支援のその後】
水中リハビリテーションだけでなく、複数のスポーツを組み合わせた「リハ・スポーツ」による支援も行っていることをわかりやすく伝えられるようになるなど、プロボノチームの提案を活かしたウェブサイトの作成により受益者、家族、支援者、医療・福祉関係者等の様々な方から理解を得るための土台作りができました。ウェブサイトは、相手に興味を持って検索してもらうことで団体の活動を知ってもらう情報提供の形であるため、引きこもりがちな高齢者の方など、本当に支援したい方々に向けてどのような情報発信ができるのか模索していくことが今後の課題です。また、この活動へのアクセスが簡単になるよう活動拠点を増やしたり、そのために地域団体同士などがより密に繋がれるよう、情報のハブとしてサイトを使ってもらえることを目指していきます。
[2019年8月、津田塾大学 森川ゼミ・伊藤(由)ゼミの協力により取材]