プロジェクト詳細
NPO法人ドリームタウン
団地の中に人のつながりを生み出す。5年かけて育んできた、コミュニティカフェの真髄。
“東洋一のマンモス団地”と言われる高島平団地。1万戸を超える集合住宅が建ち並び、およそ16,000人が暮らすこの大規模な住宅都市は、高度経済成長の象徴的な存在として知られています。同時に、昭和40年代に入居した住民が高齢化し、地域の高齢化率は4割を超えています。さらに55〜64歳の人口が2割近くに上るため、さらなる高齢化の進展が見込まれています。
一人暮らしの高齢者も多く、地域のつながりを生み出す取り組みが求められている中で、高島平の団地にはいくつものコミュニティカフェが誕生しています。そのうちのひとつが、NPO法人ドリームタウンが運営する「地域リビング プラスワン」(以下、「地域リビング」)です。
2018(平成30)年6月17日。この日、高島平団地の一角にある集会室には、「地域リビング」に様々な形で関わるおよそ100人が集いました。「地域リビング」の開設5周年を祝う会が開かれたのです。
5年前の立ち上げ当初は、月に7日程度しか開店しておらず、周囲の人たちから「本当に大丈夫か?」と心配されたというエピソードも今は昔。いまでは、50人を超えるボランティアスタッフが入れ替わり立ち替わり出入りし、昼食の時間帯「おうちごはん」を担当するボランティア「ごはん当番」は月1〜4回程度でローテーションを組み、平日は毎日、それぞれ腕に寄りをかけた食事を提供しています。また、夕方の子ども食堂の時間帯「おかえりごはん」では、12坪の店内に多いときで30〜40人の子どもや地域の人、仕事帰りの親などがぎっしりと集まり、にぎわいが最高潮を迎えます。
「地域リビング」を運営する井上温子さんは言います。
「空白や穴があるから提案していく、そういう感覚を大事にしたい。カフェに食べに来たお客さんだった人が、当番がいない日があるなら私が作るわよ、と言ってボランティアになってくれたんですよ。」
この記事を書くためにお伺いしたときには、家でつくれる保存食をテーマにしたワークショップを企画していました。それは、一度つくったら長い期間楽しめるようなものを一緒につくることで一人暮らしが楽しくなるのではないか、という発想から来たのだとか。
「こういうことは、私が何か言って始めるというのではなくて、みんなでただ普通に話をしているというだけなんですよ。例えば、ここに来ている幼児のお子さんで、平仮名を書けない子がいました。保育園では習えない、家でも余裕がなくて教えられない、親御さんも小学校一年生になるのがとても不安と言っている。そんな中、元保育士のボランティアさんが一緒に勉強を見てくれたりして・・・。そういうことがいっぱいあるんです。人には、もともと、誰かのために何かしたいという気持ちがあると思うんですよね。そういう気持ちをうまく引き出せたらいいなと思います。」
みんなの気持ちをつなぎ、思いがカタチになる。その結果が、いまの「地域リビング」の周りに集まる人たちのコミュニティだとすれば、井上さんは、これまで5年間かけて、コミュニティをすくすくと成長させる効果的な働きかけを積み重ねてきた、ということが言えそうです。
東京ホームタウンプロジェクトでは、2016年度・2017年度と2回にわたって「地域リビング」の活動を応援してきました。特に、2016年度については、50人を超えるボランティアに向けたマニュアルづくりを通じて、「地域リビング」の運営基盤づくりをサポートしています。このマニュアルは現在、カフェの運営の随所で活用されていますが、担当する役割ごとに細分化されたスタッフ向けの内容で、他団体・外部の人がすぐにそのまま活用できるまでには若干の距離があります。
今回のプロジェクトでは、2016年度に作成したマニュアルをヒントにしつつ、団地という空間の中に、人がふれあうコミュニティを生み出すエッセンスを抽出することで、多世代でにぎわうコミュニティカフェをつくるためのプログラムづくりにチャレンジします。
(本記事は2018年度の情報をもとにしており、活動内容等は現在と異なる場合があります。ご了承ください)
団体基本情報
- 団体名
- NPO法人ドリームタウン
- 活動開始時期
- 2011/平成23年
- 代表者名
- 井上 温子 さん
- 所在地
- 〒175-0082 東京都板橋区高島平2-28-1-102
- ホームページ
- https://hometown.metro.tokyo.jp/post_daihon/chiiki_living/
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進捗率
進捗状況
活動現場見学・体験を実施しました。
創設者・代表者インタビューを実施しました。
個別ヒアリングを実施しました。
成果物であるプログラムの構成素案を元に、これまでの気づきを改めて代表井上さんと共有しました。地域リビングプラスワンの大切なキーワードを再確認。更に構成内容を詰めて行くべく、引き続き現場密着やヒアリングなどを行う予定です。
プログラム構成提案を実施しました。
多世代交流プログラムの開発に取り組むもう一つのプロジェクト「こまじいのうち」チームとの情報交換会を開催しました。
チーム内で分担しながらプログラムの制作を進めつつ、定期的なチームミーティングで各章に対する議論を行い、内容を深めています。
団体理事の方々への詳細ヒアリング・参与観察を実施しました。
中間提案&ワークショップを実施しました。これまでの調査内容をプログラムの中でどのように伝え、読み手に役立てられるものにするのか、「地域リビング」から抽出するエッセンスのさらなる精製のため、この後修正を進めていく予定です。
井上さんとの最終ミーティングを行いました。 ここまでのヒアリングや分析で得た濃厚な情報をまとめた資料は、36ページにも渡る壮大なプログラムに。 細かな表現の確認をしながら、地域リビングの大切なエッセンスを漏らしていないか、全員で読み合わせを行いました。 長時間となったミーティング後の夜食には、今日までが食べ頃な寄付バナナを頂き、皆でぱくり。 インタビュー等でご協力頂いたみなさんから預かったたくさんの素材を6人のメンバーで料理し、間もなく完成となるプログラム。 視察の依頼も多い地域リビングプラスワン、そして、次なる地域リビングを作ろうとする多くの方に活用頂けるものとなりそうです!
成果
“誰でも受け入れる”から生まれる、日常をシェアする居場所ーー「地域づくりの台本」が完成。
板橋区高島平団地で、多世代のボランティアが運営に関わり、幅広い住民が利用するコミュニティカフェ「地域リビングプラスワン」。
多くの人を引き付けるこの場所の魅力、運営者の考え方や基本的な価値観、スタッフの振る舞い方や人との接し方などを「地域づくりの台本」として詳細に描き出すことに挑戦しました。
この場で自然に行われている事からノウハウとなる要素をあぶり出すため、団体に関わる様々な方々へインタビューさせて頂き、度重なるミーティングで議論を深めながら完成させました。
プロボノワーカーによる客観的視点での質問によってボランティアの方から聞き出せたお話は、団体の運営をされている皆さんにとっても新鮮なものとなったようです。
成果物は以下のページより、ご覧になれます。
【支援のその後】
2018年の「地域づくりの台本」作成のプロジェクトでは個性的な地域活動に取り組むドリームタウンを題材に、多世代交流を進めるためのヒントをまとめた“虎の巻”を作成し、現在ウェブサイトに公開しています。これ以降、この資料をきっかけにリングプラス・ワンを視察に訪れる方が増え、団体活動をPRする資料になっていると感じています。
また、2017年の支援で作成した運営マニュアルは、 コーディネーターがボランティアに運営に関する打ち合わせで必要なときなどに現在も配布、活用されています。ボランティアの役割や運営の仕組みなどが整理された上、それを口頭ではなく、文字でも伝えることができるようになったため、現場の負荷軽減、意思疎通の確実性が向上。また、プロジェクトを通じ、外部の風が入ることによって、運営改善に向けた緊張感が生まれたことがプロジェクトのまた別の成果だったと振り返ります。
現在は運営方法に変更があった場合、手書きで修正しているとのことで、マニュアルの修正版を作成する余裕を生み出せるようにしていきたいと話していました。
(2019年7月、プロボノワーカー土井さん、 津田塾大学溝口さん取材)
チームメンバー
- PM
- 土屋さん
- メンバー
- 岩木さん 椎名さん 土井さん 三塚さん 堀之内さん