プロジェクト詳細
NPO法人 全国移動サービスネットワーク
より多くの人が「移動の自由」を手に入れるために。移動サービス提供団体の業務革新。
(協力:NPO法人 町田ハンディキャブ友の会)
高齢化が進展する中、深刻な社会問題の一つとして取り沙汰されているのが、高齢ドライバーによる交通事故の頻発です。高齢者の運転免許の自主返納が進む一方、豊かな暮らしの礎となる「移動の自由」をいかに守っていくのか。“いつでも誰でも行きたい場所へ行くことができる”交通インフラの充実、移動支援の実現が喫緊の課題となっています。
各地で外出や移動が困難な障害者、高齢者の外出を支援する移動サービスの動きが活発になったのは1970年代後半頃から。1998年に、日常的な外出だけでなく広域的な運行のネットワークを構築しようと全国100余りの団体が集まって、「移動サービス市民活動全国ネットワーク」ができました。やがて、福祉的な目的とはいえ利用料金の支払いが発生する移動支援を、道路運送法に抵触しない形で実施するにはどうすればよいか、といった課題が浮上してきました。そこで、2006年に法整備を含めた政策提言を行うネットワーク団体としてNPO法人化し、現在の「全国移動サービスネットワーク」(以下「全国移動ネット」)となりました。
設立以来、全国移動ネットでは会員である日本全国の移動サービス提供団体に対し、各地の移動サービスの知見を集めて情報提供を行うほか、運転者に向けたテキストの発行や研修の実施、移動サービスの新規立ち上げの相談・支援などに取り組み、障害者・高齢者など特に移動に困難を抱える人たちの暮らしを支える移動支援の仕組みを一つずつ整えてきました。中でも、転換期と言えるのは改正道路運送法が施行された2006年以降、一定の条件を満たせば自家用車を登録して合法的に移動支援サービスを提供できる「自家用有償旅客運送(うち、福祉有償運送)」制度ができたことがあげられます。
さらに、近年では、2015年の介護保険制度改正により、軽度者へのサービスが国の給付から市町村事業へ移行され、多様な生活支援サービスが必要とされるようになったことで、地域内の互助をベースとした試みが各地で見られるようになっています。
そうした状況を踏まえ、東京ホームタウンプロジェクトでは2016年度に、新たに移動サービスを始めようとする方々に向けた案内資料づくりの支援を実施しました。しかし、活動団体としては、継続する上での課題も多く抱えているのが現状です。
「移動支援は今、まさに過渡期。誰もが家に引きこもることなく、行きたいと思った時に移動ができる自由を支える意義ある活動として、社会的なニーズは増え続けています。一方で、事務局スタッフや運転ボランティアの担い手不足を背景に、ニーズに十分に応えきれない団体が数多く存在しています。運転ボランティアの確保や利用者への広報活動だけでなく、サービスの裏側にある業務工程はかなりのボリュームになり、どこも運営は大変だと思います。」
そう語るのは全国移動ネットの事務局長で様々な団体の事情を知る伊藤みどりさん。
「依頼の受付、配車と実績の管理、利用者への請求、運転手への支払いの管理、介護保険適用に相当する金額の報告・請求業務など、移動サービスを支える事務作業にかかる業務時間の圧縮は、各団体の共通課題です」
そんな中、全国移動ネットの会員で、町田市で長らく移動支援を担っているNPO法人町田ハンディキャブ友の会で、ボランティアの方が構築したExcelを活用したシステムが使い勝手がよいという情報が飛び込んできました。
町田ハンディキャブ友の会事務局長の井上廣美さんによると、「以前は他のソフトで作られたシステムを使っていて、数字のコピー&ペーストの時点で間違いがあったり、ヒューマンエラーも少なくありませんでした。なんとかしたいな、という課題は感じていても、ずっと使ってきていて昔からのやり方もある中、どう変えれば良いのかわからないし、なかなか新しいものに移行するタイミングもないままでした。」
町田ハンディキャブ友の会の利用登録会員は約400名おり、車両の運転を担当する有償ボランティアのドライバーは16名が登録しています。ドライバーは、プロのミュージシャンや電気工事士など経歴は様々で平均年齢は70歳前後。65歳で仕事を終えて、何かやろうかなと活動を始めたメンバーが集まっています。そのうちの一人、加藤武生さんは、かつてシステム開発を本業としていました。その経験を活かして、「この数字をこの時間軸、期間で抽出できるようにしたい」など、運営管理上の希望にシステムで応える通称“かとちゃんログ”を構築。そのおかげで町田ハンディキャブの運行管理や報告業務などに関わる時間が圧倒的に短縮されることになりました。
事務局長の井上さん曰く「これまでに3日かかっていた管理・運営作業が1時間で済むようになった」という、まさに劇的な効果が表れています。さらに、「このExcelのシステムを、他の移動サービスの団体が使い勝手がよいと言っていただけるのであれば、喜んで提供させていただきますよ」と続けます。
一部機能は団体独自の部分がありますが、大半は、他の移動支援のサービスに取り組む団体の月次や年次の管理業務にも十分活用できそうな機能が揃っています。
今回のプロジェクトでは、全国移動ネットから、町田ハンディキャブ友の会で活用している業務システムの機能を東京都内で活動する複数の会員団体に紹介した上で、プロボノワーカーとともに、団体それぞれの業務課題の見える化と整理を行うワークショップを実施。団体同士の課題解決につながるノウハウを共有することで、移動サービス全体の運営効率化につなげていくための機会を創出します。
(本記事は2019年度の情報をもとにしており、活動内容等は現在と異なる場合があります。ご了承ください)
団体基本情報
- 団体名
- NPO法人 全国移動サービスネットワーク
- 活動開始時期
- 1998/平成10年
- 代表者名
- 中根 裕(全国移動サービスネットワーク)
- 所在地
- 〒156-0055 東京都世田谷区 船橋1-1-2 山崎ビル204号 (全国移動サービスネットワーク)
- ホームページ
- http://zenkoku-ido.net
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進捗率
進捗状況


事前オリエンテーションを実施しました。

活動体験・現場視察を実施しました。
当日オリエンテーションを実施しました。
プロボノワークを実施しました。
成果物の提案を実施しました。本日のワークはひとまずここで終了。新宿に移動し、全チームが集合しての成果報告会にて、本日の成果を発表。1日の労を互いに讃えあいました。

支援先からのフィードバックを実施しました。
成果物の納品を実施しました。
成果
活動は別々でも、目指すところは一緒。ワークショップを通じての嬉しい発見も。

今回のプロジェクトでは、中間支援組織として移動支援のサービスに取り組む団体が抱える課題を解決するため、1DAYチャレンジの当日に実際に東京都を中心に各地で移動支援サービスを運営されている団体の方々を招いて、課題整理ワークショップを実施しました。
プロボノチームは事前に支援先を訪問してワークショップの流れを整理し、当日までに進行スライドを完成させました。
当日のワークショップでは、午前中に、町田ハンディキャブ友の会の事例発表を行いノウハウを共有。
午後は、各団体の「目標」「ありたい姿」、それを実現するための「課題」「原因」を、個人ワークとグループワークを繰り返しながら洗い出しました。
プロボノメンバーも一緒にワークに参加することで、参加者の想いの言語化をサポートするよう取り組み、色々なアイデアや共通課題、具体的な解決策を出すことができました。
支援先の方からは「色々な団体が集まるワークショップの良さを最大限に引き出していただけて、テーマ別勉強会のような形になったのは、プロボノチームの皆さんに企画のアイデアやご提案をいただいたからこそ」といった嬉しいコメントを頂きました。
チームメンバー
- メンバー
- 北原さん 後藤さん 小林さん 辻田さん 深澤さん